事業概要

現在、当社ではAIプロダクトと音楽配信サービスの開発に取り組んでいます。
いずれも、現代社会における新たな価値観と経済の在り方を探る実践として位置づけており、単なる技術や娯楽を超えた意味を持たせています。
以下に、それぞれの開発内容と背景にある思想についてご紹介します。

1. AIプロダクト

私たちは、「話すAI」ではなく「黙って寄り添うAI」という新しい方向性を持ったAIスピーカーを開発しています。その着想の原点にあるのは、フランスの作曲家エリック・サティが提唱した「家具の音楽(Musique d’ameublement)」。彼は音楽が常に主役である必要はなく、空間に調和し人の暮らしに溶け込む「背景音楽」の概念を打ち出しました。

この思想を現代の生活に再解釈し、スピーカーが人からの命令を待つのではなく、生活のリズムを理解して必要なときにそっと音を添える存在として設計しています。
たとえば、テレビが消えた静寂のタイミングで自動的に音楽(BGM)を再生するなど、AIが人に代わって生活空間に自然な変化をもたらします。

余計な機能や利便性の追求ではなく、最小限で完結する仕組みによって、拡大や大量生産を前提としない、人とAIの新しい関係性を築きたいと考えています。

2. 情報配信サービス

また並行して、上述のAIスピーカーと連携する専用の音楽配信サービス『FURMONIE(ファーモニィ)』を開発しています。

“家具”を意味する“FURNITURE”と、フランス語で“音の調和”を意味する“HARMONIE”を組み合わせた造語であり、『家具の音楽』の思想を土台としています。
クラシック、ジャズ、ボサノバ、環境音など、聴覚への刺激を抑えたジャンルをメインに構成されており、精神の静けさと集中を自然に促します。

『FURMONIE』は、生活環境の変化(テレビのオンオフや部屋の照度など)をAIが感知し、自動的に音楽(BGM)を再生。ユーザーは思考の整理、深い読書、学習への集中、心を緩める休息の時間といった、“静かで豊かなひととき”に自然と導かれます。
この体験は、創造力の活性化や感情の安定、ストレスの緩和といったWell-being(心身の健やかさ)の向上にもつながり、日常における自己との対話や精神的な回復の機会を増やしてくれます。

『FURMONIE』は、商業的アルゴリズムや広告を一切排除し、精神的なノイズから解放された生活環境を提供する、静けさを大切にするミニマルなサウンドプラットフォームです。

3. ポスト資本主義としての持続可能な仕組みづくり

私たちが取り組むAIスピーカーと音楽配信サービス『FURMONIE』の開発は、単なるプロダクトやビジネスを超えて、「拡大を前提としない経済は成り立つのか?」という問いに対するひとつの社会実験でもあります。

ドイツの哲学者にして経済学者のカール・マルクスは、彼の著書『資本論』において、資本主義が無限の成長と利潤追求の構造によって人間の生活と価値観を規定し、労働力を商品化していく仕組みを指摘しました。現代社会においてもなお、それは個人の生活の余白や精神的豊かさを犠牲にする形で続いています。

この構造から距離を取り、人とAIが協働する極小規模の事業体を築くことは、搾取を伴わずに価値を生むモデルの実証でもあります。
サービスはマス向けではない超ニッチな領域に限定し、固定費を発生させないラインで販売数(売上)にも上限を設けることで、利益至上主義から自らを切り離します。
それは同時に、あえて「成長しないこと」を選び取るという倫理的選択であり、子どもたちの未来が資本に従属せずとも心豊かに暮らせる社会になり得ることを構想するための基盤づくりでもあります。

『FURMONIE』は、静かな生活のための道具であると同時に、「こんな事業の形も成立する」という一つの仮説の提示です。
人とAIの共生、無理のない規模、精神的豊かさを重視する経済。この実践が小さくとも、次世代にとっての可能性の扉を開くささやかな社会実験であると、私たちは信じています。